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膝前十字靭帯(ACL)損傷 ブログトップ
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長期展望を重視したACL再建後のアルペンスキー競技復帰 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

今週の平日は、志賀高原でFISレースが行われています。
特に今日明日のGSは、国体前の最後のレースとして利用する選手も多く、
北海道から西日本まで、なかなかのメンバーが揃っている様子ですね。
男女とも10点台、20点台を獲得した選手が多く出たレースだったようです。

実は今日、昨年のシーズン終盤にACLを損傷して手術を行った選手がFISレースに復帰しました。
ちょうど術後10ヶ月になるタイミングでのレース復帰。
自分の場合にはだいたい7〜8ヶ月でゲートトレーニングを許可し、
ゲート開始後3〜4週(ゲート滑走日数15〜20日)くらいで試合に出しているので、
それに比べてもかなり遅目の復帰ということとなります。
選手のレベルとしてもインターハイや高校選抜では表彰台の常連で、
国際大会にも派遣されるような世代別ではトップクラスの選手でしたから、
そのようなレベルの選手としては、まさに異例とも言えるスケジュールです。


これにはちょっとした理由がありました。
今回の怪我にあたり、指導者とディスカッションをしていく中で、
ケガの原因となったであろう彼女自身の滑りのスタイルはもちろん、
筋力やバランス、コーディネーション能力、フィジカルといったところを、
この手術後のリハビリを使って、良い方向に改造していこうという計画を立てたのですが、
その計画がなんと、4カ年計画となったのです。

もちろん、1年毎の短期目標としてこのケガ明けのシーズンでも、
3月のFECジャパンシリーズである程度成績を出す、というのを目標としています。
ただ、11月にフリースキーやバリエーションを始めてからも、しっかりとフィジカルの時間を取り、
この2月中旬になるまで、レースに出ずにひたすらトレーニングを積む…
試合で成績が出るような状態に、「仕上げる」のは、3月でもOKという感じでやってました。
こういった割り切りを持った取り組み方というのは、僕自身も初めての経験でしたし、
一緒にこの戦略を建てた指導者の方にとっても、初めての経験だったようです。

術後再断裂や対側膝の断裂というのは、術後1年から1年半に多いのですが、
その原因の大半は、患側(手術側)膝関節や周囲筋力のパフォーマンスが充分でなかったり、
体幹や股関節周囲の筋力を代表とするフィジカルの弱点が残っていたり、
元々のスキースタイルに、靭帯を切ってしまうような動きの要素があるという事にあります。
長期展望に立って、シーズンに入ってからもこれらの要素を一つ一つしっかり潰して、競技復帰する。
このやり方が必ずしも正しいというわけではないのでしょうが、
アプローチの選択肢としてこのような考え方ができるというのは、良い事かと思います。


同じチームでやはり同じ時期に(他施設ですが)ACLを手術した選手が12月からFISレースに出て、
まずまずの成績を残している中、自分はひたすら地道なトレーニングをしているだけというのは、
非常にストレスが溜まるものだったでしょう。
ここから3月のジャパンシリーズ&全日本選手権、4月のFISで爆発して、
ストレスだらけの11月〜1月が無駄なものではなかったということを、証明してほしいものですね。
ちなみにその選手、今日の試合でなかなか良い(昨年でいうと3番目)のポイントが取れたようです。
シーズン後半戦に、期待しています。

清澤恵美子選手、星瑞枝選手から学んだこと [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

昨日は、ちょっと西が丘まで行ってきました。
サポート中の及川貴寛選手がACL再建後、JISSでリハビリをしているもので。
赤羽でタカにメールしたら、
「清澤さんと星さんとちょっと出てて、戻ってるとこです。」
と。
あー、あの2人もちょうどいるのか!
と、言う訳で3人分の差し入れを持って、顔を出してきました。


みなさんも時間があったので、膝の様子を見せてもらったり、逆にこっちが色々と質問したり、
海外でのメディカル状況やナショナルチームの活動の様子、今までに経験したケガの話も含め、
アルペンスキーに関わる様々なお話や体験談を3人から聞くことが出来ました。


一番印象深かったのは、特に女子トップランカーの2人のケガや自分の身体に対する意識の高さ。
タカもアスリートとしての意識や姿勢は素晴らしい物があるとは常々思っているのですが、
やはり世界最高峰のW-cupで戦っている選手たちというのは、更に一枚上。
術後の膝の様子や身体の変化に対する興味、ケガとそのリハビリに対する知識を知ろうとする意欲など、
普通の患者さんたちより、はるかに細かいディティールにいたるところまでの関心を持っていました。


自分も、ケガをしたジュニア選手に対しては復帰までの身体作り、メンタルの構築、
食事やストレッチを含めた日常生活における習慣の注意指導をしているという自負はありましたが、
トップ選手たちの意識はそれをはるかに上回っていました。
ジュニアに与えても難しい部分もあったので、全てを伝えるわけではないのですが…
役にたつ要素や実践できる要素をかいつまんで患者さんたちにフィードバックしていくので、
その内容に関しても、またそのうちまとめてこのBlogで紹介していきます。


あと、医療者として感じたこと。
やはり、スキーを取り巻く医療環境が世界に比べてまだまだPoorですね。
ケガの治療やリハビリテーションにおける環境のみならず、
ジュニアにおける外傷予防、外傷復帰におけるメディカルと指導者&保護者の連携不足、
医療者の育成プログラムの欠如、傷害発生状況のデータ分析とその還元など、
色んな面で後れを取っているというのを改めて考えさせられました。


スキー選手たちは厳しい環境の中、強い気持ちを持って世界と戦っています。
自分も含めた医療者で、そういった選手を支えるに見合うだけの覚悟と努力をしている人間が、
どれだけいるのかな?と、考えると、サッカーに比べるとまだ「世界標準」とはとても言えません。
スキーと、スポーツと向き合って生きていくという自分の気持ちを新たにするという意味でも、
昨日の3人からは、凄く良い刺激を受けました。


自分に気合を入れ直してくれた3人のアスリートたちには、心より感謝しています。
そして、雪上での活躍を心から祈っています。

清澤恵美子⇒ http://ameblo.jp/emikiyo/
星瑞枝⇒ http://ameblo.jp/skigirl-mizue/

伊藤みきの前十字靱帯損傷雑感と、上村選手への感謝 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

一昨日からソチ五輪の競技がスタートしてますね。
木曜の深夜に行われていた女子モーグル予選。
先日の記事でも書いた、ACL断裂を放置して試合に臨んだ伊藤みき選手ですが…
残念ながら公トレで膝を再度捻り、痛みによって競技に参加することはできませんでした。
1月15日のW杯のトレーニングでも同様のことはあったようですね。


ACL断裂を放置した場合、膝の捻りによるストレスがかかると膝が亜脱臼してしまい、
大腿骨と脛骨が衝突することで痛みを出します。
これをGiving Wayと言うのですが、スキーだけでなく、カッティング動作、ピボット動作でも、
引き起こされることが多いです。


アルペンスキーの場合、ACLが切れっぱなしでもある程度は出来てしまう部分もあります。
実際に、12月〜1月にACL断裂をきたした選手でも、2月上旬の全中やインターハイに、
切れっぱなしのまま行かせるケースは結構あります。
自分の患者さんで言うと去年は4人、今年は5人の選手がレースに出ていますが、
やれる選手は8割から9割の満足度、できない選手だと5〜6割の満足度ですね。


もちろん、前十字靱帯を切れっぱなしにしてスキーをする事を推奨するという訳ではありません。
進学の推薦に係る場合、ポイントの更新やタイトルレースがかかっている場合、など、
特殊な場合に限ります。
それに加えて…パフォーマンスの満足度は個人差もあるが50%〜90%であること、
軟骨や半月板損傷のリスクがあること、対側損傷のリスクがあること、
そして、医療者にそれらの責任を負えるだけの覚悟と技術があることが条件になります。
もちろん、目標とするレースが終われば即手術!
どの選手も手術の日程を事前に決めておいて、できるだけ早く再建手術を施行します。


ただ、モーグル競技の場合にはアルペン競技よりACL不全の影響は大きいのかもしれませんね。
彼女の場合も、五輪前に試合は出られなかったし、トレーニングでもエアは飛ばなかったようです。
自分の場合には、ノルディックやアルペンに関してはある程度放置例のノウハウはありますが、
フリースタイルに関しては経験が少ないので、あくまで推測になりますけど。


個人的に一つ残念に思ったことは、伊藤選手のDNSが決まってから、
自分のFacebookフィードに、
「なんでメディカルがストップを掛けなかったんだ」
「現地まで行ってできないという状況が予想されるのなら、なんで連れて行った」
「お金の無駄にもなる」
という反応を示す整形外科医や医療者が多かったこと。


選手個人の状況はなんともわかりかねますが、当然欠場⇒手術というのが一番医者も楽だし、
そのような話は絶対にしているはずです。
前述のとおり、実際にスキー選手のACL断裂放置例をしっかりと見て、医学的な見地だけでなく、
パフォーマンスの落ち込みがどの程度なのか、その状態で各々のステージで戦えるのか、
というところまでしっかりと診ている整形外科医やトレーナーであれば、
今回の決断を全否定、という気にはならないと思うのですが…
もちろん、一般的に考えれば欠場を勧めるのが常識的ではありますけど。

そういったメディカルからの情報を踏まえて、やれるかやれないかという判断になるかと思いますが、
このような欠場リスクがあっても、メダルを取る、成績を出す、という事を前提に考えた時に、
Giving way再発のリスク、パフォーマンスの低下を織り込んだ中で、
完全な状態でなくとも、それだけの可能性があるというSAJ(とJOC?)の判断だったからこその、
強行出場という判断だったのではないでしょうか。
どこの競技連盟も勝ちに行こうとしてるんだから、もっと良い選択肢があれば、
選手差し替え、または選考しないという選択をするわけですからね。


極端な話、中学生の女の子が6月にACL損傷をして学校が休める夏休みまで待機するか、
即手術をするか、どっちにしましょうか?という話の延長と何の変わりもありません。
その中で、強い負荷のスポーツをさせるだけの努力と工夫、リスクを取ることをすればよいだけだし、
手術に関しては靭帯再建に加えて半月縫合、半月再建、軟骨・骨軟骨移植の技術と知識を身につけ、
「競技を続けさせた責任」をしっかりと負えばよい話です。
ただ、言葉にすると簡単ですが…相当エネルギーを使わなくてはこれを実現させるのは厳しいですよ。


あと、
「本人の出たいという意志に流されるな」
「医師が出場許可を出してはいけなかった」
という意見もありましたが、さすがにね・・・それはもう、医者だけの問題じゃないですから。
こんなことを議論すること自体がナンセンスかと。


スポーツを見ている医者、特に個人競技を見ている医者であれば、
主治医の立場になったら、その選手の五輪に向けた4年ないしはそれ以上の努力を潰すというのは、
本当に特殊な状況ではないと難しいと思うし、軽々しく口にはできません。
(バンクーバー五輪で藤森選手を欠場させた時のように、本当に危険な状態であれば別ですけど)
前十字くらいで、と言うと語弊はありますが、そこは絶対に休めとまで言える怪我ではないので。。。
チームスポーツならもう少し違ったアプローチから欠場を促すのが当然ですが、
個人競技の場合、特に冬期競技の場合には、各競技連盟のサポートが少ない中、
個人の努力と労力を多く使って取ってきた出場枠になりますので、ちょっと難しい部分もあります。


ただ、そういったジャッジは必要ですし、あってしかるべきものだとは思います。
ただ、それは主治医に委ねられるのではなく、冷静な第3者の医者、
例えば、SAJやJOCの公式ドクターがするべきことなのかもしれません。
今回は、ケガをしてからの主治医と、出場のジャッジをするドクターが同一だったので、
本人が出場を強く希望し、パフォーマンスもある程度保たれていれば、
出場を許可せざるを得ない状況だったのではないでしょうか。


まぁ、
『冷静に出場の可否をジャッジする第3者としての立場の医者』
は、頼まれても絶対にできませんね!
五輪に向けてきた選手の努力と情熱を一瞬で否定しなくてはいけないのですから、
相当つらい立場ですよ(#+_+)



最後になりましたが…
上村愛子選手、本当にお疲れ様でしたヾ(__。)
本当に最後まで立派な競技生活だったと思います。
長野五輪の時には、ケイタイのCMで高校生アイドル的な存在だったのですが、
その後はモーグル競技を引っ張り続け、W杯総合優勝をはじめとする様々な記録を残すとともに、
後輩を、そして、モーグル競技自体を引っ張り続けてきた選手ですね。
長い間、本当にありがとうございました。
最後に、五輪のメダルを取らせてあげたかったですね…
タイムもターンも良かったのに、あの点数?
結局、ネームバリュー重視の採点かい??
と、思っちゃいました⊂`Д´)つ=3
彼女に関しては書きたいこともいっぱいあるのですが、またおいおい機会を作りたいと思います。

Lindsey's challenge was over... [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

先日の記事に書いた、リンゼイ・ボンのACL再断裂の件ですが、
昨日、本人のFacebookでも、FISのページでも報告がありました。





FISのHP


やはり、高速系ではパフォーマンスを発揮するのは難しかったのでしょうね。
残念ではありますが、断裂後の彼女のパフォーマンスを見たり、来年のことを考えると、
賢明な判断であると思います。
来年はアメリカで世界選手権もありますし、リンゼイにはさらなる活躍を期待します。


僕個人としても今季は、アルペンだけでも4人の患者がACLを断裂したまま競技継続&経過観察中。
今年は全員中〜高校生…かな?
僕のスタンスとしては、基本的には切れた選手にはやらせないという方針です。
ただ、選手のラストシーズンであったり、特に進学に影響が大きくなる高2のシーズンの場合には、
事情を勘案して2月の各種タイトルレースや高校選抜までは、期間限定でやらせることもあります。


まぁ、パフォーマンスの低下はもちろん、半月板や軟骨損傷のリスクは有りますので、
そういった2次災害が起きた際にはその時点ですぐ手術をするという条件付きですし、
僕も靭帯再建に加えて半月板の縫合や再建・各種軟骨処置を行うだけの技術と覚悟を身につけて、
(本当はやらせたくないけど)緊張感を持ってそのような対応をしているというのが実情です。


昨日の高校ラグビーの記事を見ても、桐蔭の選手がACLを断裂したまま頑張った、
ということが美談として取り上げられていました。
その行動を否定するつもりはありませんし、スポーツをサポートしている医者としては共感します。
ただ、その選択肢を取るまでに様々な葛藤や不安、苦しみがあったり、
本人および周囲のメディカルチームもかなりのリスクを覚悟していることを思うと、
リンゼイのようなトップ選手ではない、ジュニアアスリートのケガをそこまで報道するのはどうかな?
と、日本のスポーツ系マスコミの報道姿勢に対しては、いつも違和感を感じますね(-_-メ)



リンゼイ・ボンとACL再断裂 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

最近、自分の本業?である整形外科医としての毎日が忙しく、
スキー関連のニュースのチェックを、この2ヶ月ほど全くしていませんでした。
しかし最近、何気なくFacebookを眺めているとこんなフィードが…





あれ?
なんか調子悪げな雰囲気を醸し出してるコメントだな??
と、何気なくスルーしたものの「torn ACL」という単語に違和感を感じました。
でも、自分の再建後ACLグラフトの事をそう表現しているのかな???
と、勝手に解釈して流してしまってました。


そしたら数日後、更にこんなフィードを発見。。。





3つ目の文を簡単に訳すと、
「五輪という夢に向かって一所懸命頑張るけど、ACLが無い状態でのスキーは、思ってたより大変だわ。」
と、あります。
あれ、いつの間に再断裂したの!!!(∇°;;;;)!!!
と、驚いて調べてみたら、こんな記事が。


⇒ http://tracking.si.com/2013/11/19/lindsey-vonn-training-knee-injury/
⇒ http://www.nbcnews.com/health/lindsey-vonn-tears-her-right-acl-again-her-prognosis-isnt-2D11624346


術後10ヶ月での再断裂。
ショッキングな出来事ではありますが、ACL再建を行っている整形外科医にとっては、
時折出会う(非常に残念な)出来事です。


彼女のコメントを見る限りでは、五輪までは頑張るのかなぁ。
でも、不安定感を自覚しているのであれば、ちょっと厳しいかな。
あくまで自分の想像ですが、五輪後はすぐACL再再建手術をするのではないでしょうか??
先日も書きましたが、今の時点でのケガでは状況はどうあれ、そういった選択しか無いでしょう。


彼女はコロラドのSteadman clinic、ってか、Howard Head Sports Medicineで、
治療を受けているのでしょうから、どのようなサポートのもと、どのような結果を出すのか、
非常に楽しみです。





…HEADがスポンサードしているようですが、リンゼイのようにHEADを履いている選手じゃなくても、
もちろん受診することはできるみたいですよ!
ATOMICを履いてるミサトが、ちゃんと診てもらえたようですから(笑)
⇒ http://ameblo.jp/mii-ski/entry-11730774514.html

フォーラムに参加して [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

昨日は、毎年恒例の膝関節フォーラムに参加してきました。
毎年12月1週目の土曜日という開催日程なので、J1のチームドクターは出席が難しかったかと…
今年のテーマはACL損傷〜予防と動作解析、関節軟骨損傷の2つでした。


近年のトピックスとしてModel-based image matchingという、
ビデオ映像に骨モデルをマッチングさせて受傷起点を解析するという話を、
東京医科歯科大学の古賀先生がしてくれました。
スキー関係の方には、スキージャーナルにACL損傷の記事を書いた先生、といえばわかるでしょう。
その他にも、いろいろな先生がいろいろな視点からのお話をしてくれました。


結論からすると、側面から見た状態で体幹が直立し後傾していたり、後足部接地をきたすことにより、
足部がロックされ、股関節が内旋位を取ってしまうことが受傷の大きな原因となるようです。
あとは、体幹筋力の低下によって膝関節に外反のストレスがかかることも危険な動きです。
もちろん、股関節外旋筋力の低下もリスクになるでしょうから、ACL断裂予防においては、
股関節と足関節、体幹筋力の環境整備あたりが重要なポイントとなるようです。


あとは、再建後の再断裂例において大腿四頭筋力の低下傾向があるということも述べられていました。
そのセッションでも出ていましたが、もちろん、絶対的な筋力だけが重要なのではなく、
その筋力を「いかに上手く使えるか」ということがかなり大切だと思うのですが…
やはり絶対的な筋力というのも、ある程度は必要である、ということでしょう。


ACLにせよ、軟骨損傷治療にせよ、自分がやっていることや意識していることに加え、
進もうとしている方向は間違っていなさそうだな、というのはわかりました。
手術の技術的なことだけでなく、スポーツや仕事復帰におけるトータルマネジメントにおいても、
世界標準を目指してやっていきたいと思います。


今日はJ2から去る人が2チーム(徳島、鳥取)、来る人が1チーム(讃岐)確定しました。
徳島のGKコーチと讃岐のトレーナーは、昔うちのチームで一緒に働いていた人だったので、
彼らが喜んでいるのをTV画面を通して見ることができ、ちょっと嬉しかったですね。
いつかまたピッチで再会できることを、楽しみにしています!


そしてなにげに、ソチ五輪開幕まであと60日をきりました。
サポートアスリート達も北米、EU、中国と世界各国に散って、試合やトレーニングをこなしています。
さぁ、そろそろスキーモードに切り替えてこう!ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ

膝複合靱帯損傷のパターン(と、腓骨神経麻痺) [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

今日は久々、整形外科医が読んで興味を示しそうな話題を書いてみます。
ってか、整形外科医しかわからない話になりますが、ご容赦ください。


そんな今日のネタは、Journal of Orthopaedic Trauma (JOT)からの論文、
『Investigation of Multiligamentous Knee Injury Patterns With Associated Injuries Presenting at a Level I Trauma Center』
です。


内容的には、外傷センターが膝関節複合靱帯損傷の頻度を調査したというもの。
詳細の記述は避けますが、頻度的には
① ACL-PCL-PLC (43%)
② ACL-PLC    (17%)
③ ACL-PCL-MCL (17%)
と続き、単純なACL-PCL損傷はわずか5%しかありません。


個人的には "膝関節複合靱帯損傷≒膝関節脱臼” として考えているので、
この結果は当然かなー、と、思います。
転落や事故などの高エネルギー損傷では、単純な前後方向の力単独での損傷というのはほとんどなくて、
必ず回旋や内外反の力がかかっていますからね・・・"(ノ_・、)"


その他にはPLC損傷の詳細調査(Popliteus-LCL、Popliteus-LCL-Bicepsで9割近く。LCL単独はまれ)や、
合併損傷の頻度に関わる記述があります。
過去、個人的に苦しい戦いを強いられた合併症として腓骨神経麻痺や血管損傷があるのですが、
やはりどちらの損傷も、20%以上の症例に合併しております・・・


一番面白かったのは、腓骨神経麻痺を合併した時の複合靱帯損傷形態のお話。
ACL、PCL、PLCの3か所が絡んだ複合靱帯損傷パターンではどう考えても、
ACL-PCL-PLCにおける腓骨神経麻痺が一番多い(58%)のは間違いありませんが、
ACL-PLCと、PCL-PLCではどちらの方に腓骨神経麻痺が多かったと思います???
本文中の考察ではそのあたりの原因についてはほとんど触れられていませんでしたが、

・受傷機転(受傷時の大腿骨と脛骨の位置関係)
・腓骨神経の走行および、受傷時に牽引される方向、Entrapmentを起こしうる解剖学的部位

を考えると答えはおのずと出てきまして・・・
ACL-PLCでは21%、PCL-PLCでは5%と、大きな差があるんですよね。
僕はPLCの修復、再建を行う時には必ず腓骨神経も剥離する事にしているのですが、
今後は(特に遠位の前方に入っていく部位で)神経のダメージがないかどうかもしっかり確認しなくちゃな、
と、感じさせられました。


PLCを含む複合靱帯損傷は、年に2~3回あるかないかという非常にレアな症例なのですが・・・
レア症例の治療戦略構築においては経験だけでなく、文献的な知識が大きな助けになってくれます。
たまたま流し読みをしていて拾った文献でしたが・・・
意外とみなさん気にしているところだと思い、紹介してみました。

再損傷および対側損傷に対する取り組み [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

ACL再建手術を本格的に始めて、6年目になりました。
そろそろ客観的なデータに基づいた個人的な意見を言えるくらいの数となったかな?と。
今日のテーマは表題のとおり、再断裂と対側損傷の問題。
再断裂は再建靭帯がまた断裂する事で、対側損傷とは再建した側と逆側のACLを切ってしまうことデス。


211件のACL初回再建患者の経過を追っていくと、今のところ再断裂は7人、対側断裂は11人です。
この数字は客観的には極端に多いという訳ではないと思うのですが・・・
11/211という確率を多いとみるか、少ないとみるかはいろいろな意見があるとは思います。
ただ、個人的にはスポーツレベルの高い選手やスキー選手が多いと言うことを差し引いても、
対側断裂の確率をもう少し下げたいという気持ちがあります。


中でも、患側手術復帰後2年以内での対側損傷が8人もいるということに関しては、
医療者側の競技復帰マネジメントにもう少し改善の余地があるのかな、とも考えてしまいます。
再建靭帯が(色々な発表に比べても)靭帯の安定性や筋力に劣っていると言うことはなさそうなので、
それ以外の要素を改善していけば、もう少し減らせるのではないかな?と。

・再建術後の膝関節を中心とした下肢アジリティ能力の改善
・膝関節プロプリオセプション(関節固有覚)の改善
・体幹筋力および股関節周囲筋、ハムストリング強化による姿勢保持能力の改善

などの術後リハビリテーションの工夫によって、もう少し対側損傷の予防をしたいところですね。
逆に、上記の要素を個人で改善させる努力をすることで、
再断裂や対側損傷のリスクを減らせる可能性がある!・・・と、個人的には仮説を立てています。


現在、VICONという動作解析機器を用いて、そのあたりの課題についてのデータを取っております。
そのうち、皆さんに発表できると良いのですが"(^_^;)"

ジュニアスキー選手 ACL再建術後サポートプログラム [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

実は3年前から、中学生から高校生を中心に表題のような活動をしております。
内容としてはそんなに大層なものではなく、再建術後に陸トレや雪上での動きを現場で確認して、
患者や指導者と一緒に、現状の問題点および今後の方向性をディスカッションするというくらいなんですけど…


それでも、こうやって術後の患者パフォーマンスを『現場』で確認するということは、結構有用です。
医者にとっては、画像や理学所見、クリニカルスコアに反映されない部分が確認できますし、
患者や指導者にとっては、より早く、より安全に競技復帰ができるという点で、
お互いに少なからずメリットがあると感じています。


昨日はそのプログラムの一環で、戸隠スキー場に行ってきました。

IMG00771.jpg

小学校の頃に行ったことはあったのですが、レイアウトやバーンの記憶は全くありません。
でも、ゲレンデや食堂などに何となく思い出がありましたね。
なんとなく??懐かしい感じでした。


今回の患者さんは7月にハムストで再建して、術後6カ月から雪上トレーニングを開始した選手。
雪上に出たと言っても、いきなりフリースキーやゲートに入るわけではなく、
バリエーションや低速練習を通してアジリティ能力を高め、コリドールなどの規制トレーニングは術後7カ月で、
本格的なゲートトレーニングは術後8カ月で開始しております。
ポイントとしては、コーディネーショントレーニングを室内に加えて雪上でやっているということ。
スキー選手なんで、雪の上でスキーを使ったトレーニングメニューを増やすと言うことですね。
実はこのあたりのことって・・・意外とみんなやっていないと思うんです。


IMG00772.jpg


種目を問わず早期復帰で一番危険な事項は患側の再断裂および、対側断裂です。
患側の再断裂は、靭帯の強度が不十分な時期に患肢に無理な外力がかかる事によって起きます。
その一方、対側断裂は患側のパフォーマンス低下に伴う対側膝の過負荷や、アクシデントによって起きます。
前者の予防は医師の方で指示を出す事である程度予防できますが、
後者に関してはコーディネーション能力や筋力を早期に上げていくと言うことしかありません。


今、僕らがやっているプログラムは競技復帰を、
『積極的 かつ 安全に』
行うための物です。
普通の場合、医者は診察室で、指導者は雪上でしか患者との接点がないんですよね。
そのような状態では、効率の良い競技復帰はできないと思います。
そういう点からすると、指導者との情報共有が一番の目的かもしれません。


今までも外来受診のたびに、メールや電話にて指導者への診療報告はしていたのですが、
それだけでは限界がありまして。。。
やはり患者の動きをリアルタイムに同時に見て、ディスカッションをするというのが一番わかりやすいんです。
そういった経験から、このようなサポートプログラムを始めてみたわけです。


しかし、これを実現させるにあたって学校の先生やスキー関係者には大変ご迷惑をおかけしています。
協力してもらえることを感謝しつつ、これからプログラムをもっと洗練させていって、
患者さんの利益が増えていくように頑張っていきたいと思っております(*´∀`*)


最後ですが、戸隠といえばやっぱりこれを食べなくちゃ!


IMG00773.jpg


いつも思うんだけど、戸隠の蕎麦ってなぜ丸まって盛り付けられているんだろう!?

両側ACL損傷の治療は? [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

最近は仕事にかまけてあまりACLの話をしてなかったってことで、今日は久々にACL関連の話を。


昨日、タレントの北斗晶さんが両膝の前十字&後十字損傷と言う事で、
両膝とも手術を行うという話がありましたね。
僕も何人かプロレスラーの患者さんがいますが、プロレスの選手は膝の靭帯が切れっぱなしの人が多くて。。。
再建しても、プロレスというのは非常に再断裂リスクの高い種目(/□\*)
ドラゴンスクリューなんかを食らおうもんなら、その一撃であっさりと再断裂しちゃう場合もあるんだろうな、
と、思うと、確かに現役のうちに再建というのは難しいかもしれません。


北斗さんもそんな流れで十字靱帯断裂を放置していたとの事ですが、
今年は24時間マラソンで一杯練習してたからかな?
どうも両膝とも歩くのが大変な状態になってしまったらしく、手術を行うそうです。
僕が読んだスポーツ新聞では、【前十字靱帯と後十字靱帯の手術】、としか書いてなかったので、
靭帯再建をするのか、人工関節置換術をするのかははっきりしないのですが、
全治1年というニュースの話と彼女の年齢を考えると、おそらく靭帯再建術なんでしょう。


僕も今まで、初診時に両膝のACLが切れている患者さんは5人ほど経験しております。
うち1人は、片膝の自覚症状がほとんどなかったため片膝しか再建手術をしていないのですが、
残る4人は両膝ともACL再建手術を行いました。
両膝の再建を行う時には、2回に分けて片膝ずつ行う方法と、1回で両側を行う方法があります。


両膝ともACL再建をした4人のうち、最初の1人は春休みと夏休みの2回に分けて再建手術をしたのですが、
最近は早期のスポーツおよび社会復帰のために、1回の入院で両側の再建を行うようにしております。
ただ、同時に両膝を再建してしまうと再建後早期のリハビリや日常生活に支障をきたすため、
通常2週間の入院の所を3~4週の入院としてもらい、1~2週あけて2回の手術という形にしてもらっています。


術後早期荷重を許可している施設では両膝同時再建手術を行うという選択肢もあるかと思うのですが、
僕個人の考えとしては術後1~2週の完全免荷および関節固定期間を作る事で移植靭帯の癒合が早まり、
術後6か月での臨床成績や競技復帰率が高まると考えておりますので、
術後超早期におけるリハビリの安全性を保つ為、このようなやり方でやらせてもらっています。


もちろん、このやり方が絶対に正しいというわけではありませんケド(・ω・;)
ただ、片膝をやった後にしばらく時期をあけて逆の膝というのは、
膝関節の回復過程が競技に影響する時間が、両膝同時の治療に比べて長くなってしまうので。。。
個人的には、両膝を同時に治療するという方法をお勧めしております。
もちろん、運動をそれほどしていない人にとっては片膝ずつの手術というのもアリだとは思いますね。


北斗さんの場合・・・
・アスリートは引退しており、現在はスポーツを生業にしている訳でない事
・職業も主婦&タレントという、比較的負荷が少ないものである事
・ACLに加え、PCLや側副靭帯?も同時に再建しなくてはならない事
などから、免荷や運動制限期間を厳密に守らせるために、片膝ずつの手術になるのかな?
と、勝手に推測しています。
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